AT&Tの再起:かつての『お荷物株』がウォール街で再び輝き始めた理由
巨額の負債と迷走の時代は終わりました。AT&Tは本業回帰で劇的な復活を遂げています。光ファイバーとワイヤレス契約の急増により、このブルーチップ銘柄は「通信というインフラ」が究極のキャッシュカウ(収益源)であることを証明しています。
何が起きたのか
長い間、AT&Tの株価を眺めるのは、まるでトヨタの渋滞予測を見ているかのように退屈なものでした。しかし、最新の決算発表により、同社のロゴである「デス・スター(死の星)」が全速力で再始動したことが明らかになりました。
AT&Tは主力事業で大きな勝利を収め、直近の四半期で421,000件のポストペイド携帯契約純増を記録しました。競合他社が血眼になって顧客を奪い合う中、AT&Tは独走状態です。しかし、真の主役はモバイルではなく、地面の下のガラスケーブルでした。光ファイバー契約数は283,000件増となり、19四半期連続で20万人以上の純増という驚異的な記録を達成しています。
投資家はこのニュースを歓迎し、株価を押し上げました。TikTokの視聴からリモート会議まで、私たちの生活に不可欠な「接続性」に集中するという戦略が、ソニーがかつてエレクトロニクス本業に回帰した時のように、市場から高く評価されたのです。
戦略:『コンバージェンス(融合)』の力
AT&Tの経営陣が「コンバージェンス」という言葉を使っても、難しい話ではありません。これは非常にシンプルで強力な概念です。日本でいう「セット割」をより高度にしたビジネスモデルと言えるでしょう。
AT&Tは、自宅の光回線(Fiber)と携帯電話(Wireless)の両方を提供できれば、顧客の離脱率が劇的に下がることに気づきました。デジタル生活の「心臓部」を握っている会社を乗り換えるのは、非常に面倒だからです。ジョン・スタンキーCEOは決算発表で、「我々の戦略は機能しており、長期契約してくれる質の高い顧客を獲得することで、正しい成長を遂げている」と強調しました。
クイック・テイク(重要ポイント)
- ワイヤレスの勝者: 421,000件の新規契約は、消費者がモバイル通信において依然としてAT&Tを信頼している証拠です。
- 光ファイバー熱: 283,000件の新規接続は、高速インターネットがもはや贅沢品ではなく、水道や電気と同じ「公共料金(ユーティリティ)」になったことを示しています。
- 解約率(チャーン)の低下: AT&Tの解約率は歴史的な低水準にあります。一度獲得した顧客を逃さない仕組みができています。
- キャッシュこそ王様: 数十億ドルのフリーキャッシュフローを創出しており、これがかつての課題だった巨額負債の返済と、株主への安定した配当の源泉となっています。
なぜこれが重要なのか
なぜ、一介の通信会社の決算がそれほど重要なのでしょうか? それは、AT&Tが日経平均における主要銘柄のように、消費動向の「炭鉱のカナリア」だからです。人々が他の支出を削っても通信費を優先するという事実は、接続性が水や電気と同じ「生存必需品」になったことを意味します。
さらに、配当目的で日本の「新NISA」や米国のリタイアメント口座で同社株を保有する数百万人の投資家にとって、この安定感は大きな安心材料です。かつてのメディア事業(HBOやCNNの買収)という迷走を経て、AT&Tはついに「退屈だが堅実なインフラ企業」に戻りました。ボラティリティの激しい現在の相場において、この「退屈さ」こそが、投資家がプレミアムを払ってでも手に入れたい価値なのです。
結論
AT&Tはハリウッドの映画スタジオになろうとするのをやめ、インターネットという世界の「配管工」に徹することに決めました。ウォール街は今、その賢明な決断を祝してパーティーを開いています。