インテルのCFOが約3,800万円の『自社株買い』を敢行、「半導体終末論」は行き過ぎか?
インテルの決算発表を受け、ウォール街がパニック売りに走る中、同社の最高財務責任者(CFO)デビッド・ジンスナー氏が自腹で25万ドルの買い注文を出しました。この『押し目買い』が、なぜ平均的な取引以上に重要な意味を持つのかを解説します。
何が起きたのか
パーティーを主催したのに誰も来なかった時、あえてさらに豪華な軽食を買い足すようなものです。インテルのCFO、デビッド・ジンスナー氏が今まさにそれを行いました。散々な決算報告を受けてインテル株が急落(ナイアガラの滝のような下げ)を見せる中、ジンスナー氏は自らの資金を投じて「退却」ではなく「攻め」の姿勢を見せました。
ジンスナー氏は先日、インテル株 6,365株を、約25万ドル(約3,800万円)で購入しました。これはあらかじめ決められた自動売買やストックオプションの付与ではなく、市場での直接購入です。投資の世界では、役員が株を売る理由は「自宅の購入」や「子供の教育費」など様々ですが、「自腹で買う」理由はただ一つ、現在の株価が本来の価値より安すぎると考えているからに他なりません。
この「インサイダー買い」は、インテルが半導体レースで苦戦し、トヨタ自動車やソニーなどの日本企業も注視する世界的なチップ供給網の再構築を急いでいる最中に行われました。同社はエヌビディア(NVDA)やAMDなどのライバルに追いつきつつ、自社工場で他社チップを受託製造する「ファウンドリ事業」の確立という大改革の真っ只中にあります。
背景:嵐の中の経営判断
この25万ドルの賭けがなぜ重要なのかを知るには、現在のインテルが置かれた状況を理解する必要があります。直近の四半期決算は、控えめに言っても「大規模修繕が必要な家」のような状態でした。売上高は大幅に減少し、発表された業績見通しは、冷却ファンのないCPUよりも投資家の心を冷え込ませました。
ジンスナー氏の購入前、株価は2桁パーセントの暴落を記録し、時価総額で数兆円規模が吹き飛びました。市場では、巨額の工場建設コストやAI対応チップへの移行の遅れが懸念されています。しかし、日経平均株価が揺れ動く際に見られるようなパニック売りの渦中で、会社の金庫番であるCFOは、むしろ「今が買い時」だと判断したのです。
インテルの広報担当者は、この購入がジンスナー氏の**「インテルに対する信念と、株主価値創造へのコミットメント」**を反映したものであると述べています。市場が信頼を失った時に、自らリスクを取って信頼を示す。これはコーポレート・ガバナンスにおける古典的かつ強力なメッセージです。
クイック・テイク
- 大胆な買い: CFOデビッド・ジンスナー氏が、株価低迷期に自腹で25万ドルを投じ6,365株を購入。
- 身銭を切る覚悟: インサイダー買いは、経営陣の個人資産と株価パフォーマンスが直結するため、一般に「強気」のシグナルとされます。
- 逆転への布石: この動きは、インテル経営陣が現在の悲観論を一時的なものと考えており、巨大な「IDM 2.0」戦略が軌道に乗っていると確信していることを示唆しています。
- 逆張りシグナル: 個人投資家が狼狽売りに走る一方で、内部の財務データをすべて把握している人物は買い向かっていました。
なぜこれが重要なのか
なぜ一人の役員の取引に注目すべきなのでしょうか。株式市場において「センチメント(投資家心理)」は非常に強力な影響力を持ちます。株価が急落すると恐怖の連鎖が生まれますが、CFOによる高額購入は、その恐怖に対する「サーキットブレーカー(遮断機)」の役割を果たすことがあるからです。
インテルにとって、今は正念場です。AIブームの中で「持たざる者」と見なされていますが、もし彼らが世界クラスの製造メーカーへの脱皮に失敗すれば、それは株主だけでなく、米国のハイテクインフラ全体、ひいては日本のサプライチェーンにとっても大きな問題となります。ジンスナー氏の購入は、内部の人間は「泥舟から逃げ出しているのではなく、むしろ舵を強く握り直している」という信号なのです。
これは投資の格言である**「他人が恐怖している時に強欲になれ」**を地で行く行動です。財務責任者がこの水準を「バーゲン価格」だと考えているのであれば、市場は短期的な痛みに過剰反応し、工場拡張による長期的なポテンシャルを無視している可能性があります。
結論
インテルのCFOは、現在のスランプは「行き止まり」ではなく「絶好の割引期間」であることに、3,800万円の賭けに出ました。