
「利食い千人力」の実践:ジム・クレイマーがダウの巨人2社を縮小した理由
2026年の絶好調なスタートを受け、クレイマー氏率いる投資信託が利益確定に動きました。ホーム・デポ(HD)とハネウェル(HON)のポジション縮小から、日本市場にも通ずる「守りの資産運用」の極意を学びます。
投資の要諦:勝ち逃げのタイミング
投資における最善の策は、常に「次の大化け銘柄」を探すことではありません。時には「十分だ」と判断し、利益を確実に手元に残すことが重要です。これは、日本の格言で言うところの「利食い千人力」そのものです。ジム・クレイマー氏のチャリタブル・トラストが今週行ったのは、まさにこの戦略的な利益確定でした。
2025年の停滞期を経て、ダウ工業株30種平均の重鎮であるホーム・デポ(HD)とハネウェル(HON)は、2026年に入り二桁増という目覚ましい上昇を見せました。トラストはホーム・デポを約390ドルで50株、ハネウェルを236ドルで20株売却。これは全売却(エグジット)ではなく、ポートフォリオのリバランスを目的とした「トリミング(部分売却)」です。
不動産市場の「凍結」と金利の壁
ホーム・デポを取り巻く環境は、近年の日本の不動産市場とは対照的です。米国では、3%台の低金利ローンを組んでいる住宅所有者が、現在の7%近い高金利への借り換えを嫌がり、住み替えを控える「ロックイン現象」が続いてきました。これは、トヨタが新車への買い替えを促進したいのに、ユーザーが今の低燃費車を手放さない状況に似ています。
しかし、潮目が変わりつつあります。トランプ政権がファニーメイなどを通じて200億ドルの住宅ローン担保証券を買い取る計画により、金利低下への期待が高まっています。ジェフ・マークス氏は「30年物住宅ローン金利が6%の心理的節目を下回れば、ホーム・デポはさらに上昇するだろうが、期待が裏切られれば調整局面に入る」と分析しています。
ハネウェルの「企業分割」という触媒
一方、ハネウェルはソニーグループや日立製作所がかつて行ったような「事業再編」のストーリーです。同社は2026年第3四半期に航空宇宙部門のスピンオフ(分離独立)を予定しています。巨大なコングロマリットが解体される際、個々の事業価値の合計が元の時価総額を上回ることは歴史が証明しています。
2025年末のデュポンの事例と同様、投資家はこの「コーポレート・ディボース(企業の離婚)」に賭けています。ハネウェル株は直近の決算発表からさらに4%上昇し、2022年から2023年にかけて仕込んだポジションは平均30%の含み益を抱えるまでになりました。
今回のポイント
- 着実な利益確定: トラストはホーム・デポで7%、ハネウェルでは30%という大幅な利益を確定させました。
- 金利の「6%の壁」: ホーム・デポの復活は、住宅ローン金利が心理的境界線である6%を下回るかどうかにかかっています。
- スピンオフの期待感: ハネウェルの航空宇宙部門の分離独立が、株価を過去最高値圏へと押し上げる原動力となっています。
- キャッシュポジションの確保: 勝ち株を一部売却することで、日経平均の急落時のような「押し目買い」に備えるための現金を確保しています。
なぜ重要なのか
今回の動きは、保守的な投資家が多い日本でも見直されるべき「リバランス」の重要性を物語っています。上昇相場では、特定の銘柄がポートフォリオ内で肥大化しがちです。それを放置すると、その銘柄が下落した際に資産全体が大きなダメージを受けてしまいます。
また、200億ドルの住宅ローン支援策への注目は、現在の株式市場がいかに政府の政策と金利動向に依存しているかを示しています。金利が期待通りに下がらなければ、「住宅市場の復活」というシナリオは一気に崩れるリスクを孕んでいます。
結論
市場が「贈り物」をくれたとき、利益を確定させることを恐れてはいけません。「少し早すぎた」と後悔する方が、「遅すぎた」と嘆くよりも、長期的な資産形成においては遥かに賢明な判断なのです。